動画 TED スキ・キム: 北朝鮮に潜入して知ったこと Suki Kim

スキ・キム: 北朝鮮に潜入して知ったこと
2015/7/2(木)
https://www.ted.com/talks/suki_kim_this_is_what_it_s_like_to_go_undercover_in_north_korea?language=ja
https://headlines.yahoo.co.jp/ted?a=20150702-00002256-ted




翻訳
2011年 金正日の最晩年にあたる6か月間 ― 私は北朝鮮に潜入していました

私が生まれ育ったのは 北朝鮮の敵 韓国です 私が暮らすのは もう一つの敵 アメリカです

2002年から数回 北朝鮮を訪れていました それで わかってきたのは この国について意味あるものを書き 政府のプロパガンダを超えた部分を 理解するには そこに入り込むしかないということです そこで私は平壌にある男子校の大学に 教師 兼 宣教師を装って潜入しました

平壌科学技術大学は キリスト教福音派が 政府と共同で設立した大学で その目的は北朝鮮の エリートの子息を教育することでした ただし布教活動はしません 死刑に値する重罪ですから 学生は270人 将来は この世で最も孤立した ― 非人道的な独裁国家の 指導者になることを期待されています そんな彼らが 着いてすぐ 私の生徒になりました

2011年は特別な年でした 北朝鮮の最初の「偉大なる指導者」 金日成の生誕100周年を 祝う年だったのです これを祝うために 政府は大学をすべて閉鎖し 学生を田畑に送り 朝鮮民主主義人民共和国が 高々と掲げた理想 ― 「世界で最も強力で豊かな国」を 築こうとしていました 私の生徒だけは 義務を免除されていました

北朝鮮は国家の体をした 強制収容所です 「偉大なる指導者」が すべての中心です 本も 新聞記事も 歌も テレビ番組も ― テーマは ただ一つです 花々は彼に ちなんで名付けられ 山々には彼による スローガンが彫られています 市民は皆 偉大なる指導者の バッジを常に身につけています 暦までが金日成の 誕生した年から始まります

学校はキャンパスを装った 警備厳重な刑務所でした 教師の遠出は 当局の監視がついた 集団でなければ許されませんでした それでも 旅行できるのは 許可が出た 偉大なる指導者を讃える ― 国家記念碑に限られました 学生たちは キャンパスを離れることも 両親に連絡することも 許されていませんでした 彼らの日常は細かくスケジュールが組まれ 自由時間はすべて 偉大なる指導者を 讃えることに捧げられました 指導案は北朝鮮側の職員の 承認が必要で 授業はすべて記録 報告され 教室はすべて盗聴器が仕掛けられ 会話はすべて聞かれていました 北朝鮮では どこでもそうでしたが 空いている場所は金日成と金正日の 肖像画で埋め尽くされていました

外の世界について話すことは 絶対に許されませんでした 科技大の学生ですから コンピュータ専攻も多かったのですが 彼らはインターネットの存在を知らず ザッカーバーグやジョブズの名前すら 聞いたことがありませんでした Facebookも Twitterも まったく意味がわからなかったでしょう 私も教えることはできませんでした

私は真実を求めて北朝鮮に行きました ところが 国家のイデオロギーも 生徒の日々の現実も 大学での私の立場でさえもが 嘘の上に成り立っているというのに いったい どこから 手をつければいいのか?

それでゲームを始めたのです 『ホントとウソ』というゲームです 手をあげた学生が 黒板に文を書き その文が本当か嘘かを みんなで当てるのです ある時一人の学生が 「去年 休みに中国へ行った」と書きました すると全員が「ウソ!」と叫んだのです ありえないことだと誰でもわかりました 北朝鮮の国民は事実上 国外に出ることを許されていません 国内を旅行する時でさえ 旅券が必要です

このゲームで彼らの真実が 少しでも明らかになればと思ったのです というのも彼らは あまりにも簡単に よく嘘をつくからです 偉大なる指導者の想像上の偉業とか 5年生でウサギのクローンを作ったという 奇妙な主張とか・・・ 真実と嘘との境界線は 彼らにも わかっていないことがありました 嘘にもいろいろな種類があると気づくまで 時間がかかりました 彼らは 世界から自国の体制を かばうために嘘をつきます 嘘を教えられて それをただ繰り返す場合もあります 時には習慣で嘘をつくこともあります でも もし彼らが学んできたことが 全部嘘なら 嘘をつかないはずがないでしょう

次に私は小論文を書くことを 教えようとしました でも それはまず不可能だとわかりました 小論文では自分なりの仮説を立て それを証明するために 証拠に基づいた議論を展開します ところが学生たちは 単に押し付けられた考え方に 従うだけだったのです 彼らの世界では 批判的思考など許されていませんでした

それから私は毎週 個人的な手紙を書く宿題を出しました 宛先は誰でも構いません かなり時間がかかりましたが そのうち母親や友人やガールフレンド宛に 手紙を書き始める学生が出てきました これは単なる宿題で 相手に届くことなどないのに 生徒たちは少しずつ 内に秘めた 本当の気持ちを表すようになりました 何も変わらないことへの うんざりした気持ち ― 将来への不安・・・ 手紙には 偉大なる指導者は ほとんど登場しませんでした

私はいつも学生たちと過ごしていました 一緒に食事をし 一緒にバスケットボールをしました 「紳士諸君」と呼びかけると 彼らはクスクスと笑いました 女の子の話をすると 赤くなりました 私は彼らが愛おしくなりました たとえほんの少しでも 心を開いてくれると とても感動しました

ただ 何かがおかしいとも感じました 彼らの世界で暮らした数か月間 ― 真実が 彼らの人生にとって 実際にプラスになるのか悩みました 私は彼らの国や外の世界の真実を 彼らに伝えたくて 仕方がありませんでした アラブの若者がSNSの力を借りて 腐敗した体制を ひっくり返していること 彼ら以外のあらゆる人々が 全世界に広がるウェブでつながっていること ただ それも結局 「全世界」ではなかったのですが しかし一方で 学生たちにとって 真実とは危険なものでした 真実を追求するように促すことで 私は彼らにリスクを負わせていました 告発されるリスク そして 失望するリスクです

公の場での表現が許されなければ 言葉にできないことを 読み取るのが上手になります ある学生は私に宛てた手紙に こう書きました なぜ私が自分たちを「紳士諸君」と 呼ぶかわかった ― それは 紳士的に生きてほしいからだ と

2011年12月 私にとって 北朝鮮での最後の日 ― 金正日の死が公表された日に 彼らの世界は崩壊しました お別れもできないまま 出国しなければなりませんでした でも 私がどれほど寂しかったか 彼らは わかってくれたと思います

滞在期間が終わりに近づいた頃 ひとりの学生が私に言いました 「先生 あなたが僕たちと違うなんて 思ったことは一度もありません 環境は違っていても あなたと僕たちは同じです 同じだと信じていることを 知っていてほしいのです」

もしも今 私が手紙で 生徒たちに応えられるなら ― もちろん そんなことは無理ですが ― 彼らに こう伝えたいです 「親愛なる紳士諸君 最後に会ってから 3年ちょっとになりますね 今 皆さんは22才 23才になった人もいるでしょう 最後の授業で 私は皆さんに 何か願いがあるか 尋ねましたね 共に過ごした数か月で 皆さんが口にした たった一つの望み ― 私に対する唯一の願いとは 私が朝鮮語で話しかけることでした 一度だけでもいいと 私の仕事は英語を教えることでしたから それは許されないと知っていたはずです でもその時 私は 母語という絆を 共有したいという気持ちを理解しました 皆さんのことを「紳士諸君」と 呼びましたが 金正恩の冷徹な北朝鮮で 紳士的であることが いいことなのか 私にはわかりません 私は 皆さんに 革命を率いてほしくもないし 他の若者に それをさせたくもありません 世界は気軽に 「北朝鮮の春」のようなものを勧め 期待すらあるかもしれないけれど 皆さんには危険を 冒してほしくありません そちらでは いつでも誰かが 監視しているからです 皆さんの身に何かあるなんて 想像したくないのです 私が皆さんに近づくことで 新しいことを吹き込んでしまったのなら 私のことを忘れてくれた方がいい 偉大なる指導者の兵士として 安全に長生きしてくれた方がいい 皆さんは以前私に 平壌は美しいと思うか 尋ねましたね その時は本心を言えませんでした ただ 尋ねた理由はわかります 教師であり 皆さんには禁じられた 世界を見てきた私が この街を一番美しいと言い切ることが 皆さんにとって 重要なのは わかっています その答えで 皆さんが生活に 少しだけ耐えられるようになるのだから それでも 私は皆さんの首都を 美しいとは思いません それは単調で コンクリートだらけだからではなく それが象徴するもの すなわち 市民が兵士であり 奴隷である この国を 食いものにしている怪物のせいです そこに見えるのは 暗闇だけです それでも皆さんの故郷ですから 憎む気にはなれません 可愛い若き紳士諸君 その代わりに いつか皆さんの手で この街を美しくしてください

ありがとう

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